両津勘吉を経営者として本気で評価してみた
久しぶりに『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を読み返していて、ふと思いました。
両津勘吉を、経営者として本気で評価したらどうなるんだろう。
無茶をする。お金儲けが大好き。うまくいっても、だいたい最後にはやりすぎる。
とても「理想の経営者」には見えません。
でも、改めて考えてみると、両津は昔から本当にいろいろな商売をしています。
商売になりそうなものを見つける。思いついたらすぐ動く。人を巻き込む。失敗しても、また次を始める。
あれ?
起業家として見ると、かなり強いのではないか。
そんなことを考え始めたら、少し本気で評価してみたくなりました。
商売を始める力は、かなり強い
両津は、とにかく商売の種を見つけるのが早い。
「これ、売れるんじゃないか」と思ったら、考えて終わりではなく、実際に動きます。
町工場の経営者たちを集めて、新しい商売を始めるような話もありました。
これ、現実の中小企業支援として考えても、結構すごいことです。
困っている事業者を集める。それぞれが持っているものを使う。新しい商売を考える。そして、実際にやる。
両津には、商売を見つける力と、動く力があります。
この2つは、経営者としてかなり大きな強みです。
「考えている」と「やっている」は違う
経営の相談をしていると、「こうした方がいいと思っている」「新しいことも考えている」という話はよく出てきます。
でも、考えることと実際にやることの間には、結構な距離があります。
人に会う。調べる。試しに売ってみる。失敗したら変える。
そこまでやって初めて、商売になります。
その点、両津にはほとんど迷いがありません。
たぶん、迷わなさすぎます。
ここまでは、経営者としてかなり魅力的です。
ただ、問題はここからです。
稼ぐ力と、会社を守る力は別なのかもしれない
両津は商売を当てることがあります。
でも、調子に乗ってやりすぎて、最後には台無しにする。
『こち亀』では、よく見る展開です。
漫画としては、そこが面白い。
でも、もし自分がその会社の株主だったらどうでしょう。
「両津社長、面白いですね」までは言える。
では、「私のお金も預けます」と言えるか。
私は少し考えます。
かなり考えます。
商売でお金を生み出す力と、そのお金を守ること。どこまで投資するかを決めること。失敗しても会社が倒れないようにすること。
これは、同じ能力ではないのだと思います。
もちろん、『こち亀』はギャグ漫画です。
両津を現実の経営者と同じ物差しで測ること自体、かなり無茶があります。
でも、その無茶な比較をしてみると、意外と経営の話になってきます。
両津社長の強さを、会社としてどう生かすのか
両津の弱点は、能力がないことではありません。
むしろ逆です。
思いつく。動く。人を巻き込む。全部できる。
だから、もし両津が会社のトップだったら、その強い行動力を、会社としてどう生かし、どこで止めるかが大事になります。
大きな投資は一人で決めるのか。誰かと相談するのか。行きすぎたとき、誰が止めるのか。
社長が優秀なら仕組みはいらない、ということではありません。
むしろ、社長が強いからこそ、仕組みが必要になることもある。
そんな気がしてきます。
では、両津がいなくなったら?
もう一つ考えてみます。
仮に両津が会社をつくって、その会社が大きく成長したとします。
社員も増えた。取引先も増えた。商売もうまくいっている。
では、両津がいなくなったらどうなるでしょう。
次の商売を考えるのは誰か。
取引先は会社についているのか、それとも両津についているのか。
人脈は次の人に引き継げるのか。
最後の判断は誰がするのか。
こう考えると、急に不安になります。
優秀な社長ほど、引き継ぐのが難しいこともある
これは漫画だけの話ではありません。
実際の中小企業にも、「その社長だから成り立っている会社」があります。
大切な取引先は社長しか知らない。仕事を取ってくるのも社長。最後の判断をするのも社長。
こういう会社の社長は、能力が低いわけではありません。
むしろ、ものすごく優秀なことがあります。
だから会社も成長してきた。
でも、事業承継になると話が変わります。
社長本人を、次の人へ引き継ぐことはできません。
人脈。ノウハウ。判断基準。仕事の進め方。
それらをどれだけ会社に残せるか。
ここが、「社長が強い会社」と「会社そのものが強い会社」の違いなのかもしれません。
結局、両津勘吉は優秀な経営者なのか
最初は100点満点で採点しようと思っていました。
でも、考えているうちに、それでは少し違う気がしてきました。
私なら、こんな評価です。
起業家として:S
商売を見つけて、すぐに動く力は圧倒的。
会社を守り、回す経営者として:C
お金やリスクまで任せるとなると、少し不安。
次の人へ渡せる会社をつくる経営者として:D
両津本人への依存が大きすぎる。
つまり、何を「優秀な経営者」と呼ぶかで、答えはまったく変わります。
両津勘吉を経営者として本気で考えてみたら、最後に残ったのは意外と真面目な問いでした。
社長が強い会社と、会社そのものが強い会社は同じだろうか。
両津のことを考えていたはずなのに、気がつくと自分たちの会社にも返ってくる問いです。
自分がいなくても、この会社は続くだろうか。
