地域を支えるのは、住んでいる人だけなのか。―登山者と「関係人口」を考える

地域を支えている人、と聞くと、どんな人を思い浮かべるでしょうか。

そこで暮らしている人。

そこで働いている人。

地域で商売をしている人。

もちろん、そうした人たちは地域にとって大切な存在です。

でも、地域との関わり方は、「住んでいるか、住んでいないか」だけでは分けられないのかもしれません。

山に来る人は、地域の「外の人」なのか

2026年9月、登山アプリ「YAMAP」と、移住・関係人口マッチングサービス「スマウト」が連携を始めたことが発表されました。

私自身、山に登るときは必ずYAMAPを使っています。

遠方へ登山に出かけたときには、山だけを目的に往復するのではなく、その地域の店舗に立ち寄ることもあります。

だから今回の連携を見たとき、

「登山者は、地域にとって単なる外からの訪問者なのだろうか」

と気になりました。

ここで注目したいのは、新しく地域に来てもらう人を一から探すのではなく、すでにその地域の山を訪れている人に着目している点です。

山が好きで、毎年同じ地域を訪れる。

登山をきっかけに地域の店へ立ち寄り、また別の季節にも訪れる。

住所だけを見れば、その人は地域外の人です。

でも、その地域へ一度も行ったことのない人と、毎年山に登りに来る人を、同じ「地域外の人」と考えてよいのでしょうか。

「定住人口」と「観光客」の間にいる人たち

国は、こうした地域との関わり方を考える言葉として「関係人口」を使っています。

関係人口とは、その地域へ移住して暮らす「定住人口」とは異なり、一度きりの観光などにとどまらず、特定の地域と継続的に多様な形で関わる人を指します。

何度も地域を訪れる人。

地域の商品を継続して買う人。

イベントへ参加したり、副業やボランティアで関わったりする人。

二つの地域を行き来する人。

関わり方はいろいろあります。

大切なのは、「住民になるかどうか」だけを地域との関係の基準にしないことなのだと思います。

移住だけが、地域との関わり方ではない

人口が減っている地域では、「どうすれば移住者を増やせるか」という話がよく出ます。

もちろん、移住してくれる人が増えることには大きな意味があります。

ただ、誰もが仕事や家族、生活を変えて移住できるわけではありません。

だからといって、その地域との関係がゼロか百かになる必要もないはずです。

年に数回訪れる。

地域の商品を買い続ける。

祭りのときに手伝う。

副業で地域の会社に関わる。

地域出身ではなくても、その町を気にかける。

そうした関係が少しずつ増えることも、地域にとって一つの力になるのではないでしょうか。

地方創生2.0でも、関係人口の創出・可視化や、都市と地方の人材循環が政策に位置づけられています。

ただ「来てもらう」だけでは、関係にはならない

一方で、ここは少し注意したいところです。

山へ一度登りに来た。

観光地へ遊びに来た。

SNSで「いいね」を押した。

それだけで、その人をすぐに「関係人口」と呼ぶのも違う気がします。

地域との関係は、人数を数えればできるものではありません。

また来たいと思う。

誰かと顔見知りになる。

店に立ち寄る。

地域の出来事が少し気になる。

困っていることを知ったら、何かできないかと思う。

そんな小さな関係が繰り返されて、初めて「その地域と関わっている」という感覚が生まれるのではないでしょうか。

今回のYAMAPとスマウトの取り組みも、登山者を自動的に関係人口とみなすものではありません。

すでに地域を訪れている人と、地域での仕事や体験などをつなぐ入口をつくろうという試みです。

私は、そこに今回の連携の面白さがあると思います。

地域を支える人は、地域の中だけにいるとは限らない

人口減少という言葉を聞くと、どうしても「何人減った」「何人増やす」という話になりがちです。

でも、地域との関係は、人口という数字だけでは測れない部分があります。

そこに住む人だけでなく、以前住んでいた人、仕事で通う人、何度も訪れる人、遠くから地域を気にかける人もいます。

地域との距離には、いろいろな段階があります。

だから地域を考えるときも、

「何人住んでいるか」だけではなく、「どれだけの人が、どんな形でこの地域と関わり続けているか」

を見ることが、これからはもっと大切になるのかもしれません。

地域を支えるのは、本当に「そこに住んでいる人」だけなのか。

身近な山へ何度も来てくれる人も、地域との関わりが続けば、いつか地域を支える一人になるかもしれない。

そんなふうに考えると、「地域の人口」というものの見え方も、少し変わってくる気がします。