事業承継の相談先は、「近い」ほうがいいのか、「広い」ほうがいいのか。

事業承継について、そろそろ誰かに相談した方がいい。

そう思ったとき、最初に迷うのは「誰に相談するか」かもしれません。

相談先には、顧問の税理士、取引している銀行や信用金庫、商工会・商工会議所、事業承継・引継ぎ支援センター、M&Aの専門会社などがあります。

地域に根ざした支援機関もあれば、全国で案件を扱う専門会社や、オンラインで相談できる窓口もあります。

では、事業承継の相談先は、身近なところがいいのでしょうか。

それとも、できるだけ広いネットワークを持つところがいいのでしょうか。

私は、この二つを単純に比べなくてもいいと思っています。

「最初に相談する相手」と「実務を任せる相手」は、同じでなくてもいい

事業承継には、後継者、会社の経営状態、自社株、相続、不動産、借入や経営者保証、M&Aなど、さまざまな論点があります。

一人の専門家が、すべてを同じ深さで扱えるとは限りません。

だから、最初に話を聞いてもらう相手と、その後に専門的な実務を依頼する相手が同じである必要はありません。

まず身近な人に話して、課題を整理する。

その結果、税務の判断が必要なら税理士へ、法務なら弁護士へ、不動産なら不動産の専門家へ、M&Aならその実務に詳しい支援者へつなぐ。

そう考えれば、「誰に全部任せるか」を最初から決めなくてもよくなります。

身近な相談先だから分かることがある

長く付き合っている税理士や金融機関、地域の支援者だからこそ分かることがあります。

会社の歴史や経営者の考え方、地域での立ち位置、取引先との関係など、数字や資料だけでは見えにくいことを知っている場合もあります。

また、経営者にとっても、いきなり知らない専門家へ「会社をどうするか」という話をするより、普段から付き合いのある人の方が話しやすいことがあります。

でも、近いだけでは足りないこともある

一方で、地域の中だけでは選択肢が足りないこともあります。

たとえばM&Aで相手を探す場合、地域を越えて候補を探した方がよいことがあります。

専門性の高い税務や法務の論点があれば、その分野に詳しい専門家が地域内にいないこともあります。

業界固有の事情や、複雑な取引条件について経験のある人を探す必要が出てくる場合もあります。

そういうときは、「近くにいるか」より「その課題に対応できるか」の方が重要になります。

「全国対応」だから安心、でもない

逆も同じです。

全国で多くの案件を扱っているからといって、それだけで自分の会社に合うとは限りません。

M&Aの支援機関を選ぶ場合でも、確認したいのは規模や知名度だけではありません。

どのような支援をするのか。誰が担当するのか。どのくらい経験があるのか。手数料はどうなっているのか。必要な専門家と連携できるのか。

会社の未来を相談する相手だからこそ、「大きいから」「有名だから」「近いから」だけでは決めにくいと思います。

相談先を選ぶ基準は、「距離」ではないのかもしれない

事業承継の相談では、「この人は全部できるだろうか」と考えがちです。

でも、相談先を選ぶときに見るべきなのは、所在地や対応エリアの広さだけではないのだと思います。

今の状況を整理できるか。

自分の専門外のことまで無理に抱え込まず、必要な専門家や支援機関につなげられるか。

そして、相談する側の事情や希望を踏まえて、選択肢を一緒に整理できるか。

最初に相談する相手と、その後の実務を担う専門家や支援機関は、同じでなくてもいい。

そう考えると、事業承継の相談先は、「近いか、広いか」よりも、

「何を整理でき、必要な先へどうつなげられるか」

で見た方が、選びやすくなるのではないでしょうか。