社長が明日、会社に来られなくなったら。

東京商工会議所が、会員企業の災害・リスク対策に関する2026年の調査結果を公表しました。

調査では、中小企業のBCP(事業継続計画)策定率は29.9%でした。また、事業継続への影響が想定されるものとして、「公共交通機関の麻痺」「停電」「物流の停止」を挙げた企業はいずれも8割を超えています。

この調査を見ていて、少し別のことが気になりました。

社長が明日、会社に来られなくなったら、その会社は動くだろうか。

会社が止まる理由は、災害だけではない

地震が起きたらどうするか。

停電したらどうするか。

仕入れや物流が止まったらどうするか。

BCPでは、こうした「もしも」に備えて、事業をどう継続するかを考えます。

では、設備でもインフラでもなく、社長が突然動けなくなった場合はどうでしょう。

重要な取引を進めるかどうか。

商品やサービスをいくらで売るか。

銀行と何を話しているか。

どの取引先との関係を特に大切にしているか。

経営者が長い時間をかけて身につけてきた判断や情報、人との関係は、決算書や業務マニュアルを見ればすべて分かるものではありません。

それらが社長一人に集中していれば、会社そのものは残っていても、意思決定が止まることがあります。

後継者が決まっていても、明日から経営できるとは限らない

たとえば、息子が数年後に会社を継ぐことが決まっていたとします。

後継者が決まっているという点では、事業承継の大きな課題の一つは解けているようにも見えます。

でも、

重要な判断は社長。

銀行との話も社長。

主要な取引先との関係も社長。

「なぜこの会社ではこうするのか」を一番よく知っているのも社長。

そんな状態だったらどうでしょう。

社長が突然動けなくなった翌日から、後継者が同じように会社を動かせるとは限りません。

「いつか会社を継げる状態」と、「明日から会社を動かせる状態」は、同じではありません。

後継者を決めることと、経営を引き継げる状態にすることの間には、思っている以上に距離があるのかもしれません。

BCPと事業承継は、同じものではない

もちろん、BCPと事業承継は別のものです。

今回の調査も、事業承継について調べたものではありません。

それでも、BCPについて考えていると、事業承継にも通じる一つの問いが見えてきます。

特定の一人がいなくても、この会社は動けるだろうか。

防災の日を前にBCPを見直す会社もあると思います。

そのとき、地震や停電への備えと一緒に、

「もし明日、自分が会社に来られなくなったら」

と考えてみる。

そこから見えてくるものも、あるのではないでしょうか。